本 クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

日航機の御巣鷹山墜落事故をテーマに、著者の新聞記者としての経験をいかした、読み応えがあり、読ませる作品。連合赤軍事件が地元記者に取りどのような意味があったのか、いや、地元で起こったニュースバリューの大きな出来事が記者に取りどのようなものであるのか、が生々しく描かれる。20年以上たち御巣鷹山の惨事がどのようなものであったか、なぜか、考えてしまうようになった自分に、以前から知っていたのに手を出せなかったこの本を今手に取る事になったのはやはり、偶然ではないのだなあ。お盆の頃になると坂本九ちゃんちゃんを悼む番組がつくられ、九ちゃんの曲が流れる。年とともにその曲の素晴らしさに気づき、またそれに呼応するように、事故のこと、事故に被災した人の事を思うようになっていた。この本は、一つの事故が、直接の関係者だけではなく、広い範囲で多くの人を長年にわたり巻き込み、動かし、人生を変えていく事を描いている。その渦は芯にあるのが、大事故であればあるほど大きいのだろうが、どのような小さな細い芯であれ、それが折れたり曲がったりあるいは力を得たら、やはり渦が起こるのだろう。人は一人では生きていないのですね。