銀座 ウェスト

 
電通通り、
パイやクッキーの並ぶショーウィンドーの横、
段を上ってドアを開けると、
店内は一気に時を辿ったような
クラシカルで明るい落ち着いた空間が広がる。


テーブル・クロスと椅子のカバーの白、
洗いたてのシャキッとした白と
茶色のバランスが絶妙。
京都にも「フランソワ」というクラッシクな名店があるけれど店内はほのぐらい。
ウェストの明るさはいいな。
暗さが必ずしも大人らしさを表現するものではない事を知る。
上品にドレスアップした婦人たち。
商談に興じるスーツ姿の男性にも気のせいか余裕を感じる。
モノクロームの映画の世界の一人になったような気がしてくる。。

ウェストには、ずっと以前に一度行ったことがある。
まだ、広告の仕事をしていた頃のこと。
一時、職場の同僚だった人が
京都から東京に移っていた。
幼馴染と東京旅行を楽しんでいた私は、
その友だちが彼女の友人に会うことになり、
しばし別行動となった。
私は私で、その間、元同僚に会うこととなり、
その元同僚が、私が好きだと思う、と、ウェストに連れて行ってくれたのだ。

銀座という場所は似つかわしくないように感じていた若い頃だったけれど、
その店はそんな気後れもすぐに忘れさせてしまい、
自然に背伸がしたくなる空間だった。
松山猛が『僕的東京案内』で、このウェストをとりあげたのは、
これより後だったように思う。
その後、東京には幾度か来ていたけれど、
ウェストのことは気になっていたけれど、行くことがなかった。
それが、昨年、東京に住む女性と久しぶりに会うことになり
「一度行きたかったところがあるの。」と連れて行ってくださった。
歩く道すがら、なんとなく。。。ひょっとしたら。。。の思いはしたのだけれど。
懐かしい、けれど、初めて来た思い出が鮮やかによみがえったわけではない。
けれど、あぁ、ここだった。。と、今ではもう合わなくなった幼馴染や元同僚を思った。
年上の知人には、「ここには一度来たことがあるのです。」となぜだか、言いだせなかったことが気になっている。
また、いつか話そうと思う。

住所:  東京都中央区銀座7-3-6 TEL:03-3571-1554