映画 にっぽん昆虫記

にっぽん昆虫記 [DVD]

にっぽん昆虫記 [DVD]

今村昌平監督の1963年の作品。
左幸子さんといえば、自分には「飢餓海峡」が忘れられない映画だったが
この作品も、肩を並べる鳥肌が立つ名演技だったと思う。そして、娘役を演じた吉村実子もみずみずしくしたたかで、力強く素晴らしかった。左幸子演じる主人公は東北の寒村をでて、残してきた家族に仕送りしながら、東京で生活の足場を築いていく。娼婦を束ねる仕事にたどり着くまでにも、その後にも、いくつかの修羅場も生々しいし、決して明るくはない。けれど、常にどこか、ユーモラスな空気が漂う。モノクロの映像が見事。東北にも東京にもよく似合う。時代の影響を受けながら、時代なんて関係のないところで生き抜いていく強さ。みはじめたらぐいぐい引き込まれてしまう作品だった。傑作だと思う。